ヨウ化セシウムの結晶は、ドーパントによってCsI(Tl)、CsI(Na)、純粋なCsIの3種類に分けられる。いずれも無色透明の立方晶である。CsI(Tl)はNaI(Tl)を除けば最も典型的なハロゲン化アルカリシンチレーション結晶である。
その光出力はNaI(Tl)の45%である。その発光スペクトルは350-700nmにブロードバンドを持ち、550nmにピークを持つ。その発光スペクトルはSPDとよく一致するため、読み出しシステムを簡略化できる。減衰時間は粒子のイオン化容量に依存するため、強電線バックグラウンド下での重荷電粒子の検出に適している。CsI(Na)の発光効率はNaI(Tl)結晶の発光効率に近い。420nmをピークとする発光スペクトルはPMTとよく一致する。その温度依存性は小さく、高温や宇宙環境での応用が可能である。純CsI結晶はCsI(Tl)に比べて吸湿性が非常に低い。純粋なCsI結晶は、CsI(Tl)よりも吸湿性が低い。その発光は、305nm付近にピークを持つ高速の固有発光(10ns)と、350-600nm付近にピークを持つ低速成分(100-4000ns)からなる。低速成分を抑制するための徹底的な努力の結果、高速/低速比は4にも達する。全光出力はNaI:Tlの4-5%と大きい。この結晶の応用の可能性は、その高速タイミング特性にある。
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